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鍵屋は家賃や水道光熱費を経費にできるの? 経理の基本の家事按分を解説
個人事業主として鍵屋の事業をおこなう際、自分の自宅を事務所として使用する場合もあるでしょう。出張対応する鍵屋であれば、わざわざ事務所を別で借りずとも、自宅を事務所にすることで十分といえます。
しかし、そんな時に困るのが「家賃や水道光熱費は経費として計上できるのか」という点です。結論から言うと、自宅兼事務所と使っている場合、経費にできるケースとできないケースがあります。きちんと理解を深めておかなければ、確定申告の際などに「どうすればいいの?」と焦ってしまうかもしれません。
本記事では、個人事業主の鍵屋が家賃や水道光熱費を経費にするポイントや注意点を解説します。
1.個人事業主の鍵屋が家賃や水道光熱費を経費にするには
2.家賃を家事按分する場合の計算方法
2.1 仕事で使っている部屋やスペースの広さに応じて按分する
2.2 使用時間で按分することも可能
3.水道光熱費を家事按分する場合の計算方法
3.1 作業場所の床面積などで計算する「占有率」で按分
3.2 労働時間の割合を計算する「使用率」で按分
3.家賃や水道光熱費を経費にする際の注意点
3.1 敷金は経費にならない
3.2 賃貸借契約書や領収書類などを保管しておく
3.3 税務署に事業関連性を説明できるようにしておく
4.まとめ
1.個人事業主の鍵屋が家賃や水道光熱費を経費にするには
実際に、個人事業主の鍵屋が家賃や水道光熱費を経費にできるかどうかは、状況によって異なります。
自宅兼事務所を借りている場合、家賃や水道光熱費を全額経費にすることはできません。しかし、自宅内で使用する事務所の面積に応じて一部の家賃を経費にできたり、事業に必要な分だけ水道光熱費にできたりします。この自分の事業に使っている分に合わせて家賃や水道光熱費を経費にすることを、「家事按分」といいます。ただし、家事按分は計算が煩雑であり、計算方法をしっかりと理解し、正確に計算する必要があります。
2.家賃を家事按分する場合の計算方法
前述の通り、個人事業主が家賃を経費として計上するには、自宅兼事務所を借りている場合には家事按分が必要となります。ここでは、家事按分の計算方法について詳しく説明します。
2.1 仕事で使っている部屋やスペースの広さに応じて按分する
家事按分の計算方法は、事業に使用している面積の割合に応じて家賃を按分する方法が基本です。具体的には、自宅の床面積と、事業に使用する面積を比較し、事業に使用する面積の割合を求めます。そして、その割合に応じて家賃の一部を経費として計上することができます。
この計算方法を具体的に説明すると、まずは自宅の床面積を測定します。次に、事業に使用する面積を測定し、自宅の床面積に対する割合を計算します。その割合を家賃に乗じることで、事業に必要な分だけ家賃を経費として計上することができます。
例えば、自宅の床面積が100平方メートルで、そのうち事務所に使用する面積が20平方メートルである場合、事務所の使用面積は20%となります。この場合、月々の家賃が10万円であれば、事業に必要な分の家賃は2万円として経費として計上することができます。
2.2 使用時間で按分することも可能
家賃を使用時間に応じて按分する方法もあります。この方法では、事業に使用する時間と自宅での生活に使用する時間を比較し、その比率に応じて家賃を按分します。
具体的には、1日あたりの使用時間を測定し、1ヶ月あたりの使用時間を算出します。そして、その使用時間の比率に応じて家賃を按分します。例えば、1日あたりの使用時間が6時間で、1ヶ月あたりの使用時間が180時間である場合、使用時間の比率は1/3となります。この場合、月々の家賃が10万円であれば、事業に必要な分の家賃は3万3,333円として経費計上することができます。
3.水道光熱費を家事按分する場合の計算方法
自宅兼事務所の水道光熱費を家事按分するには、占有率や使用率で計算する方法があります。それぞれの方法について詳しく解説します。
3.1 作業場所の床面積などで計算する「占有率」で按分
占有率とは、自宅内で事業に使用する面積の割合を計算して、水道光熱費を家事按分する方法です。具体的には、以下のような手順で計算します。
- 事業に使用する場所の床面積を測定する。
- 自宅全体の床面積を測定する。
- 事業に使用する場所の床面積を、自宅全体の床面積で割り、占有率を計算する。
- 水道光熱費を、占有率に応じて分配する。
例えば、自宅全体の床面積が100平米で、事業に使用する場所の床面積が20平米の場合、占有率は20%となります。この場合、水道光熱費を20%だけ事業費として計上することができます。
2.2 労働時間の割合を計算する「使用率」で按分
使用率とは、自宅内での事業使用時間と生活使用時間の比率を計算して、水道光熱費を家事按分する方法です。具体的には、以下のような手順で計算します。
- 事業使用時間を測定する。
- 生活使用時間を測定する。
- 事業使用時間を、事業使用時間と生活使用時間の合計で割り、使用率を計算する。
- 水道光熱費を、使用率に応じて分配する。
例えば、1日のうち事業使用時間が4時間で、生活使用時間が20時間の場合、使用率は20%となります。この場合、水道光熱費を20%だけ事業費として計上することができます。
3.家賃や水道光熱費を経費にする際の注意点
個人事業主の鍵屋が家賃や水道光熱費を経費にするには家事按分が必要ですが、計算方法だけでなく注意点をおさえておくことが重要です。ここからは、3つの注意点について解説します。
- 敷金は経費にならない
- 賃貸借契約書や領収書類などを保管しておく
- 税務署に事業関連性を説明できるようにしておく
3.1 敷金は経費にならない
賃貸物件の敷金は経費になりません。敷金とは賃料の未払いや退去時の原状回復費用に備えて、大家や管理会社に担保として預ける費用のことです。この敷金は、賃貸借契約が終了したときに原状回復費用として戻ってくるため、経費として計上することはできません。敷金に余剰が出た場合は借主に返ってきます。ただし、原状回復費用が追加でかかった場合は、その費用は経費として計上できます。
ちなみに「礼金」は、経費になります。ただし、金額によって仕分け処理が異なるので注意しましょう。
- 20万円未満の場合:一括して費用として処理でき、勘定科目は「地代家賃」
- 20万円以上の場合:費用ではなく資産として処理し、賃貸する期間または5年間で減価償却する。勘定科目は「長期前払費用」
3.2 賃貸借契約書や領収書類などを保管しておく
家賃や水道光熱費を経費として計上する場合、賃貸借契約書や領収書類などを保管しておくことが重要です。税務署からの調査が入った際に、家賃の支払い先や支払い期日、支払い方法などを証明するために必要となります。また、家事按分により計上する場合には、事業に必要な分だけの領収書類が必要になります。そのため、事業に必要な分だけの領収書類を保管しておくようにしてください。
3.3 税務署に事業関連性を説明できるようにしておく
家賃や水道光熱費を家事按分により計上する場合、税務署からの確認を受けることがあります。そのため、家賃や水道光熱費を経費として計上する際には、それらが事業に必要不可欠な費用であることを説明できるようにしておくことが大切です。たとえば、自宅兼事務所を借りている場合には、事業に必要なスペースがないために借りている、または、通勤時間を短縮して仕事に集中するために借りている、などの理由を示すことができます。事業の関連性を説明できるようにしておきましょう。
4.まとめ
本記事では、個人事業主の鍵屋が家賃や水道光熱費を経費にするポイントや注意点を解説しました。個人事業主の鍵屋が家賃や水道光熱費を経費にするには家事按分が必要です。ですが、家事按分をおこなう際には正確な計算や注意点をおさえたうえで実施しなければなりません。適切に計上することで、節税効果を得ることができます。しかし、計算方法や計上について不安な場合は、税理士などの専門家に相談することのもおすすめです。知識や理解を深めて、正しく経営をおこなっていきましょう。